韓国料理を食べていて、「美味しい。でも、歴史や文化の深さがあまり前に出てこない」と感じることがあります。

辛味、甘味、酸味、にんにく、ごま油、発酵の旨味。韓国料理には、一口目から人を惹きつける強さがあります。

けれど、韓国料理の面白さはそれだけではありません。

朝鮮王朝の宮中料理、寺院で受け継がれてきた寺刹料理、長くソウルの庶民に食べられてきたスープ料理、そして醤(ジャン)や発酵文化。

こうした料理まで辿っていくと、韓国料理にはまったく別の顔が見えてきます。

Modern Koreanだけでは見えにくかったもの

ソウルを代表するModern Koreanのレストランのひとつが「Jungsik(정식당)」です。

Jungsikの面白さは、伝統料理をそのまま再現することではありません。韓国の食材、味、料理の記憶をいったん分解し、現代の料理として再構築することにあります。

韓国料理 → 現代へ翻訳する

だからこそ、料理の美しさや技術、構成の巧みさが強く印象に残る一方、その背景にある歴史を知らなければ「何を現代化したのか」が見えにくいことがあります。

そこで面白いのが、Modern Koreanを食べる前、あるいは食べた後に、もっと歴史に近い韓国料理を食べてみることです。

1.Jihwaja(지화자)|朝鮮王朝の宮中料理

まず興味深いのが、ソウルの「Jihwaja(지화자)」。ここで触れられるのは、朝鮮王朝の宮中料理の系譜です。

Jihwajaは、朝鮮王朝最後の宮中厨房の尚宮として知られる韓熙順(ハン・ヒスン)から、宮中料理研究家の黄慧性(ファン・ヘソン)へと受け継がれた宮中料理の伝統を背景に持っています。

Jungsik:韓国料理を現代へ翻訳する

それに対して、

Jihwaja:朝鮮王朝から続く料理の系譜を現代へ伝える

という違いがあります。

2.Korea House(韓国の家)|韓国の伝統食文化をまとめて体験

料理だけではなく、韓国の伝統文化そのものを知りたいなら「Korea House(韓国の家)」も興味深い場所です。

朝鮮王朝の宮中料理を基礎としながら、伝統的な韓国料理や文化を体験できます。

「韓国の伝統食文化を体験しながら理解する場所」

Modern Koreanを見るための「教科書」のような役割にもなります。

3.寺刹料理|宮廷とはまったく違う韓国料理

もう一つ見てみたいのが「寺刹料理(사찰음식)」です。これは韓国の仏教寺院で発達してきた料理文化です。

宮中料理が豪華さや格式の歴史だとすれば、寺刹料理は、

「何を食べるのか」だけではなく、「どう生きるのか」

という思想まで料理につながっています。

代表的な店のひとつが、ソウルの「Balwoo Gongyang(발우공양)」。

一般的な韓国料理から連想する強い辛味や肉料理とはかなり違う世界を見ることができます。

4.老舗ソルロンタン|庶民が食べ続けてきた歴史

歴史は宮廷や寺院だけにあるわけではありません。

もう一つ重要なのが、「普通の人が何十年、何世代にもわたって食べ続けてきた料理」です。

代表的なのが「里門ソルロンタン(이문설농탕)」。

牛の骨や肉を長時間煮込んだ白いスープは、一見すると非常にシンプルです。しかし、こういう料理にはModern Koreanとはまったく違う種類の深さがあります。

「なぜ、この料理が長い間なくならなかったのか」

を食べる料理です。

韓国料理の「深さ」は、違う場所に隠れている

韓国料理には、辛い、甘い、酸っぱい、にんにく、ごま油、発酵といった味が一気に前へ出てくる料理が多くあります。

しかし、その奥には、

  • 宮中料理
  • 寺刹料理
  • 地方料理
  • 発酵文化
  • 醤(ジャン)
  • 乾物
  • スープ
  • 庶民料理

という巨大な歴史があります。

韓国料理に深さがないのではありません。

その深さが、Modern Koreanの一皿だけでは見えにくかったのかもしれません。

次の韓国旅行でやってみたい食べ歩き

宮中料理 → 寺刹料理 → 老舗の庶民料理 → Modern Korean

Jihwaja

寺刹料理

老舗ソルロンタン

Jungsik

そして最後にJungsikへ戻ります。

するとModern Koreanの一皿を見たとき、

「これは韓国料理の何を残し、何を削り、何を現代語に翻訳した料理なのだろう?」

という新しい見方ができるようになります。

Modern Koreanだけを食べて終わるのではなく、その前にある数百年の料理文化を辿ってから現代へ戻る。

その往復の中に、韓国料理の本当の面白さが見えてくるのかもしれません。